
和歌山雅楽会創立70周年記念定期演奏会に行ってきました。今回のテーマは「源氏物語」で、物語の中で奏でられている雅楽を演奏してくれました。
今回の特徴は「催馬楽」の演奏で、廃絶されていた雅楽の楽曲を復元して演奏してくれたことです。特に「紀伊国」は白浜町の白良浜を謳ったもので、この演奏会で初めて披露されたものです。
「催馬楽」は平安時代に都で盛んに演奏されていたものですが、応仁の乱で失われてしまいました。それ以降、演奏されていなかった雅楽の曲を復元している研究と力量に驚きます。
そして和歌山雅楽会は創立70周年を迎えているように長い活動の歴史があり、同会の先輩方は「戦中に焼け落ちた和歌山城を復興させた時の式典で雅楽演奏をしたそうです。その時の奏者の子どもやお孫さん達が、現在の和歌山雅楽会のメンバーになっていると聴かせてもらいました。
このように伝統は受け継がれていくものであり、奈良時代から続いていると言われている雅楽もまた、令和以降も伝統をつないでいくことになります。世界最古のオーケストラだと言われている雅楽ですから、日本が誇る伝統文化として永く技術をつないでいって欲しいと思います。

今回の演奏会は70周年記念として和歌山城ホールの大ホールで演奏されました。僕も毎年、演奏会に参加していますが、いつもは小ホールで観客は300人ほどです。それは雅楽を聴く人が少ないことを意味していますが、今回は大ホールで500人以上の人が入場していたと思います。主催者が広報活動をした結果だと思いますが、できることなら来年以降も大ホールを埋めるぐらいの人に来てもらいたいと思います。
伝統を絶やすことは簡単ですが、継続させることは難しいからです。一人でも多くの人に来てもらう、演奏を聴いてもらうことが伝統をつなぐことになります。和歌山県で70年も続いている伝統は、これからも護り続けなければなりません。今回は現在、関心の高い「源氏物語」を演奏会のテーマにしたことや、復元された「紀伊国」の演奏を披露したことなどから、そんな意気込みを感じさせてくれた演奏会でした。
定期演奏会は今回が22回目ですが、この回数を更に伸ばしていってくれることを期待しています。
午後からのひと時「源氏物語」の世界に浸ることができました。その時代、都では雅楽の音色が響いていたと思います。私たちは都人が愛した雅楽演奏を、時代を超えて聴くことができています。これは奇跡であり、技術の伝承をしてきた人、受け継いできた人がいるから聴くことができるのです。しかも現代の和歌山市で聴くことができることは、繰り返しになりますがやはり奇跡です。

僕も毎年のように雅楽演奏を聴いているので、この音色に馴染んできたこともありますが、特に今回は演奏の中に入り込んだようで心地よい気分になりました。
思い起こすと、僕が雅楽を最初に聴いたのは1999年の南紀熊野体験博の田辺新庄シンボルパーク内の野外舞台でした。その時の演奏も和歌山雅楽会だったことを覚えています。後に世界遺産になる熊野古道中辺路ルートの入り口の田辺市で雅楽を聴いたことは、今思うと凄い経験です。伝統文化を大切にすること、ご縁の大切さを感じます。
この演奏会を鑑賞できたことを嬉しく思いますし、来年の演奏会の題目が何かも含めて今から楽しみにしています。
そして和歌山雅楽会が次代を担う人材を育成していただき、演奏活動が永く続くことを願っています。間違いなく、和歌山県の伝統文化を担っている一員が和歌山雅楽会だと思います。