紀三井寺の境内に「春子稲荷」が祀られています。現在、田村画伯によってこの「春子」の壁画が描かれている最中です。絵画を制作中の田村画伯を訪ね、「春子」について話を聞かせてもらいました。
この「春子」の物語です。1585年3月、豊臣秀吉軍は豊臣秀長を先頭として10万人の大軍で紀州に入りました。このうち6万人は粉河寺、根来寺と落としていき、紀三井寺に入ります。本堂の観音様の近くに仕えていた「春子」は恋人である平太夫が豊臣軍に討たれて命を落とす場面に遭遇します。そこで「春子」は白狐に姿を変えて豊臣秀長の陣営に向かいます。「春子」は秀長に対して紀三井寺の安堵を願い、命を賭けて懇願しました。秀長はそれを受け入れ「焼き討ち禁制」の書状を出したことから戦火を免れました。
書状には「紀三井寺の山門から東では軍勢のいかなる者も乱暴な振る舞いをしてはいけない火を放ってもいけない 秀長」と記されていたというのです。
先に落とされた粉河寺や根来寺は焼き討ちにあいましたが、「春子」の懇願の結果、紀三井寺は戦火を免れたのです。この白狐は紀三井寺がある名草山に、この時から千年以上前から棲んでいて「観音様の白狐」と言われていたそうです。紀三井寺の窮状にあって「春子」はこの白狐の姿になってお寺を護ったと伝えられています。
この紀三井寺に伝わる話を元にして、田村画伯が下絵を描き境内にある「春子稲荷」の下にある壁に絵画を描いているのです。
田村画伯から「記録には秀長と春子の物語が記されているだけで、どのような場面であるかは書かれていません。下絵の段階から想像力が必要となりました。『春子』の性格や秀長が紀三井寺を攻めた背景や、後に秀長が和歌山城を築城することになった史実などから、紀三井寺での戦の場面を想像して壁画を制作している」ことを聞かせてもらいました。
そして紀三井寺に残っている記録では1585年3月25日、紀三井寺に「豊臣秀吉が参拝した」と一文だけが記されています。総大将の秀吉も紀三井寺にやってきて、攻めることなく参拝をしているのです。紀三井寺が焼き討ちにあわなかったことは、戦国時代の奇跡のような事実です。事実、秀吉が紀三井寺に参拝をした翌日、太田城の水攻めに向かっているのです。敵対する勢力は徹底的に攻める秀吉が、紀三井寺だけをそのままの姿で残したことは奇跡です。この歴史の奇跡の「春子」の物語であり、今に伝えられています。
実際の歴史として、秀吉軍に攻められた中で紀三井寺だけが焼き討ちにあわず、現在まで残っている理由は分かっていません。そこに「春子」が登場するのは歴史のロマンであり、紀三井寺が現存している奇跡を記している伝説です。しかし伝説は何もないところに生まれることはなく、その時代から語られてきただけの根拠があると思います。田村画伯は壁画を巻物の物語風に描いているのは、後世にまで語り継がれることを願ってのことだと思います。
紀三井寺を攻めた後、太田城を水攻めにして紀州は豊臣秀吉軍に降り天下統一することになります。そして秀長が和歌山城を築くことになりますから、ここから和歌山城を仰ぐ和歌山市の歴史が始まることになるのです。令和8年の大河ドラマは「秀長」ですから、和歌山城や紀三井寺も描かれることになるのではと思いますが、そこには秘められた「春子」の物語があるのです。
この壁画の制作期間は約1カ月で、12月11日に完成する予定です。完成した後は、令和8年1月中旬までシートが被せられて、披露する日まで見ることができなくなります。田村画伯から「片桐さん、制作期間中に見に来てください」と案内をいただいたのは、そのためです。境内での絵画制作は冷え込みと日が暮れる速さとの兼ね合いで、なかなか進むものではありませんが、完成まであと3日のところまで来ています。制作過程を拝見したことと「春子」の物語を聞かせてもらったこともあり、来春のお披露目を楽しみにしています。
参考までに、紀三井寺の境内にある手水所の見事な「青龍」の天井画も、田村画伯の作品です。
ワンリーズ和歌山の上田代表が、ホームである和歌山市内での公式試合結果の報告に来てくれました。和歌山市内のノーリツアリーナで開催されたSB1の公式試合は、12月6日は富士通と、12月7日は横河電機と戦いました。結果は1勝1敗で、勝っても負けても応援した私たちに感動を与えてくれました。
初日の富士通との試合では延長戦までもつれ込みましたが、惜しくも敗れました。その時、最終の場面でフリースローを外した選手は悔しさのあまり試合後に居残り、一人でフリースローの練習を行ったそうです。そして翌日の横河電機との試合ではフリースローを決めて勝利に貢献しています。このことは素晴らしい物語です。
代表は「このチームは選手が素晴らしいですし、チームワークがとても良いのです。本当に素晴らしいチームになっています」と話してくれました。クラブチームが社会人チームと同等の戦いをしていることは凄いことですし、レベルの高いSB1リーグで戦っている姿は感動を与えてくれます。「バスケットボールはこんなに面白いのか」と思わされます。
地元のチームとしてリーグ戦を戦っている「ワンリーズ和歌山」のファンが、もっと増えていくことを願っています。そして早速、上田代表が試合結果を報告してくれたことに感謝していますし、来期以降も高きところを目指すべきことを説明してくれたことに感動しています。


